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バラをもっと深く知る⑧
丈夫なモーブ

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バラは最近花色の幅が格段に広がってきました。中でも、かつて数が少なかった「モーブ」色の品種が目立ってきています。しかも丈夫で育てやすい品種が増えてきました。

しっとり揺らぐ赤紫色

濃いめのピンクに青色のニュアンス。いわゆる「青バラ」の藤色(ライラックピンク)よりは濃く花色。その花色が光の具合によっても微妙に感じ方が変わり、季節によっても変わる~モーブ色のバラです。

 「モーブ(モーヴ)mauve」はフランス語で、グレーのトーンが強い薄い紫色。濃いピンクより彩度を落として青みを感じる色を指します。この色のバラでは、古くは‘ショッキング ブルー’(1974年独コルデス)がよく知られます。日本のバラでは‘あおい’(2008年Rose Farm KEIJI)などがありますが、数はそんなに多くはありませんでした、

 それがここ数年で、いくつも発表されるように。花の大きさや樹姿はさまざまで、好みに応じて選べるようになってきました。しかも、さらに丈夫で育てやすくなっていることが大きな特長です。育種上、丈夫さと相反する香り高い品種も登場しています。

 

丈夫なモーブ①

プラム パーフェクト

 「青紫色」。「いや赤紫色でしょう」。2018年日本発表当初そんな会話があったのが‘プラム パーフェクト’(独コルデス2009年)。ロゼット咲き中輪。淡香。樹は木立性ですらっとした半直立性ながらよく茂り、樹勢が強く耐病性が高い品種です。四季咲きで、見るとき・写真を撮るときによって、微妙に花色が変わっています。

 

2-min
春花。京成バラ園(千葉県八千代市)で夕刻5時ごろ・日が陰ったときの花。花弁の周囲に赤みをさす花も

 

2-2-min
同じ場所で、日の入り直前の午後7時ごろ。多少黄色みが強いものの、夕陽を斜めに浴びて輝く

 

3-min
同じ場所・同じ株の10月末。細めの枝は多少伸びているが、花はかなり青みが強く感じられる

 

 

丈夫なモーブ②

オドゥール ダムール

 「香りと耐病性の高さの最大レベルでの融合が育種の課題。その点で、この品種は現時点でのベスト」とコルデス社の育種家トーマス・プロルさんが言う、‘オドゥール ダムール’(コルデス2018年・2019年日本発表)。最近のコルデス社の品種は、世界中の誰もが認める耐病性の高さを持っています。この品種は2018年ADR認定。さらに最近は香りを付加することを目指していて、プロルさんの発言は、育種上両立しにくい「耐病性」と「香り」両者をハイレベルで実現しているという意味です。

 花色は「青みをおびた濃ピンク」とか「濃いマゼンタ色」と表現されます。光を浴びると鮮やかな色ですが、少し日陰ではかなり彩度を落とした感じにも。中輪抱え咲きで、樹はすらりと伸びる直立性。木立性としても育てられますが、多くの樹勢があるシュラブローズ同様、伸びた枝をつるバラ仕立てにもできます。花名「愛の香り」の通り香り高く、第10回国営越後丘陵公園「国際香りのばら新品種コンクール」でFL系金賞受賞。「崇高」(プロルさん)とまで言う香りの質は「ダマスク・モダン ~蜂蜜やバニラエッセンスの甘さが特徴の優しい香り」とされています。

 

4-min
中輪で波打って咲く春花(左)。ポールにつるバラ仕立てにされた株姿(右、京成バラ園)。京成バラ園では樹勢がある品種はつる仕立てと木立仕立ての両方が行われており、すぐ近くには木立として仕立てられている

 

5-min
秋花。抱えて咲き、青みが強く感じられる

 

6-min
1月4日の鉢植えの花。同じ花? と目を疑うほど花弁数が増えて大きく咲く。花色はしっとりとしたモーブカラーに。香りはほかのシーズン同様に高い

 

 

丈夫なモーブ③

シャドウ オブ ザ ムーン

 2019年秋発表の最新作。花色は「赤みがかった藤色」と表現されるモーブ色。先が尖った宝珠弁が波打って重なるスタイルは‘シェエラザード’以来、木村卓功さんが確立してきたロサ オリエンティスの花のスタイル。香りはティー・パウダリーで淡めなものの、小中輪の花が安定して秋遅くまで咲き続けます。株は高さ0.9mとコンパクトで細い枝が横にふわっと広がり株元から花を咲かせるのも、最近の木村卓功さんのバラの特長です。耐病性に優れ、2019年春、ロサ オリエンティスの進化型で世界に通じる耐病性のレベルの「ロサ オリエンティス プログレッシオ」として‘マイローズ’‘シャリマー’の2品種が発表されましたが、それに続く第3弾として位置づけられ、月一回の殺菌剤散布で葉をきれいに保ちます。

 

7-min
モーブ色の波状弁花。秋花を切り花で飾る(バラの家)

 

8-min
雨に打たれても

 

9-min
草花ともよく合う(京成バラ園)

 

微妙な花色にこだわるのは、世界中でも日本だけ。また耐病性が高い=殺菌剤散布の回数が少なくても葉をキープする=栽培に手間がかからないのは、いまのバラ愛好者の大きな関心事の一つ。その二つを同時に実現した丈夫なモーブ色の品種が、このように次々に登場しています。モーブ色のバラは、世界中でも日本人がもっとも、また幅広い層が好む「青バラ」と呼ばれる藤色の品種と同じ花色の系統に、育種上位置付けられます。従来ほかの花色と比べて性質が大人しいとされてきた藤色で、かつ丈夫な品種が次々と登場するのも、そう遠いことではありません。

 

 

玉置さん

 玉置一裕 Profile 
バラの専門誌『New Roses』編集長。
『New Roses』の編集・執筆・アートディテクションを行うかたわら、ローズコーディネーターとしてバラ業界のコンサルティングやPRプランニング、関連イベントのコーディネート、バラの命名等に携わる。 
また園芸・ガーデニング雑誌への執筆や講演を通じて、バラの「美」について語ると同時に、新しいバラの栽培法の研究も行っている。

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