2017.06.12 UP
「○○咲き」のバラ
これをいったい何咲きと言えばよいの!? 最近そんな品種が増えました。
「HTは剣弁高芯咲き、FLは半八重咲き」という時代からときを経て、ガーデニングブーム。オールドローズからイングリッシュローズの、ロゼット咲き、カップ咲きが注目されました。
ジャックカルチェ
ロゼット咲きで花芯にボタンアイもみせる‘ジャック カルチェ’
ジュード ジ オブスキュア
ディープカップ咲きで散るまで花形を崩さないイングリッシュローズ‘ジュード ジ オブスキュア’
そのカップにもディープカップがあれば、浅いシャローカップもある。ロゼット咲きにも整ったクォーターロゼット咲きから少し乱れたロゼット咲きまで。それでも、何らかの規則性があった気がしますし、当時のバラの本はこれら「咲き方」を、いちばん最初のページに解説するものが多かったのはご存知の通りです。
しかし同時に花の変化を観賞するように。蕾から咲き始め、満開から散るまでの花姿です。これを正しく伝えようとすると、「咲き始めはカップ咲き(または剣弁高芯咲き)、開いてロゼット咲きに」という表現が必要になります。そこに季節の変化を加えて「春花は大きなロゼット咲き、秋の花はカップ咲き」となり、本に書く品種解説の文字数は増え小さくなるばかりです。
さて、ペチュニア、トルコキキョウなどほかの草花に「バラ咲き」があるように、バラにもほかの花に喩えた咲き方があります。「○○(ほかの花)のよう」という咲き方です。知っている花に喩えられれば、何となくイメージがわきます。
古い品種では、ハイブリッドルゴサの‘フィンブリアータ’。1891年の作です。別名「ダイアンサフローラ」と言われるようにダイアンサスのごとく花弁先に切れ込みが入ります。同じような咲き方の‘グルーテンドルスト’も含め、「カーネーション咲き」とも言われます。
フィンブリアータ
「シャクヤク咲き」として著名なのが‘イブ ピアッチェ’(1984年)。メイアン社がジュネーブのコンクールに出品したとき「ピオニー・ライクpeony like(シャクヤクのよう)」とアランさんが表現。その結果「シャクヤク咲き」という表現がすっかり定着しています。
イブ ピアッチェ
最近の品種ではインタープランツ社のラッフルローズシリーズ。とくに黄色に花弁の周囲に紅がのる‘ファイヤーワークス ラッフル’は細長い花弁が放射線状に重なり、専門家各氏がみな「キクのよう」と言います。まさしくキク! ちなみに「ファイヤーワークス」は「花火の意味」です。
ファイヤーワークス ラッフル
最近発表で注目されているのが、コルデスの‘グレーテル’。ピカピカの細長い葉の上に花芯を見せて咲きます。この品種「ツバキのようだ」という人も。確かに花芯をみせ平たく開き、クリーム地にサーモンピンクの色がのりはじめたときは「肥後ツバキ」や「サザンカ」のよう。そんな花が房になって、コンパクトな丈夫な株に元気いっぱいに花を咲かせ続けます。
グレーテル
さまざまな色とかたちの花弁が、少なく、また多く重なって一つの「花形」に。その花も見るタイミングと季節によって雰囲気が変わる・・・最近のバラは、ホントに何咲きと表現できません。だからこそイザ育てよう思ったときは、「実際の花を見て、香りを嗅いで、“感じて”選ぶ」ことが大事なのです。
玉置一裕 Profile
バラの専門誌『New Roses』編集長。
『New Roses』の編集・執筆・アートディテクションを行うかたわら、ローズコーディネーターとしてバラ業界のコンサルティングやPRプランニング、関連イベントのコーディネート、バラの命名等に携わる。
また園芸・ガーデニング雑誌への執筆や講演を通じて、バラの「美」について語ると同時に、新しいバラの栽培法の研究も行っている。
この記事で紹介された植物について
バラ
学名:Rosa /科名:バラ科 /別名: /原産地:アジア、ヨーロッパ、中近東、北アメリカ、アフリカの一部 /分類:落葉(ツル性)低木 /耐寒性:中~強/耐暑性:中~強
気品あふれるその華やかな姿から、花の女王とも呼ばれるバラ。
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