2019.05.15 UP
日本原産の美しい花。椿を自宅で育ててみよう
日本を代表とする花はいくつもありますが、その中でも冬の花として人気なのが椿です。寒さに負けず美しい花を咲かせる椿の花を、ご自宅でも育ててみませんか?今回は椿の豆知識や基本的な育て方についてご紹介します。
日本で古くから愛されてきた椿
椿は日本原産の植物です。歴史は古く、古事記や万葉集などにも椿の名前が登場しています。季節によって気温差の大きい日本でも問題なく育ち、九州から東北までのいたるところに自生しています。400年以上前から園芸品種の改良が行われてきたことがわかっており、今では日本産のものだけでも2000種類の椿が誕生しています。茶の湯の文化が根付いてからは、茶室に飾る茶花としても人気になりました。
椿の特徴
椿は、主に11月~2月にかけて咲く冬の花です。品種によっては9月頃に咲く早咲きや、5月頃まで咲いている遅咲きのものもあります。寒い時期に咲く花が少ない中、美しく咲き誇る椿は、高潔で風格のある印象を与えます。樹高は1.5m~2m程度のものが多く見られますが、育て方によっては20mになることもあります。ただ、椿の大木はほとんどが伐採されてしまい、現在はなかなか見かけることができません。
咲き方や花色はさまざま
椿は品種によって花の形や咲き方、花色などが多種多様です。一重咲きだけでも「猪口咲き」や「筒咲き」、「ラッパ咲き」など、多数の咲き方が見られます。花色も赤・白・ピンクなどさまざまです。中には色がまだらについているものや、着物の絞りのような模様になっているものもあります。
さまざまな用途で使われてきた椿
椿は観賞用のほか、さまざまな用途で人々の生活を豊かにしてきました。もっとも身近なものは椿油です。種を絞って抽出された椿油は、食用・化粧品・燃料・マッサージオイルなど、多くの場面で使われています。椿の材木は、固く割れにくい性質を持つため、将棋の駒や印鑑の材料として使われています。木炭はかつて大名に献上されていた上質な品で、現在も高級品として流通しています。木灰は日本酒の醸造に欠かせません。葉は食用され、茶葉と混ぜて椿茶として販売されています。花びらはてんぷらやジャムなど食用されるほか、染料や香料の原料にもなります。種に花に幹に葉と、椿に捨てるところはありません。
日陰でも育つ! 椿の育て方
椿は耐暑性にも耐寒性にも優れており、植えつけする場所を選びません。そのため、日陰でも栽培することは可能です。ご自宅の庭木や生け垣として植えてみましょう。
苗の選び方
椿のほとんどの品種は葉の色が濃い緑色をしています。苗のときから色が薄く黄色になっているものは元気がなく、生育不良をおこす可能性があります。また、つぼみがたくさんつきすぎているものも、苗が弱っているため避けたほうが無難です。また、椿には接ぎ木からできた苗と挿し木からできた苗が販売されています。可能なら接ぎ木苗を選びましょう。接ぎ木苗のほうが高価な傾向にありますが、その分丈夫で育てやすいのが特徴です。
土づくり
椿は栄養が豊富で、水はけの良い土でよく育ちます。地植えの場合、土を耕して堆肥や腐葉土、赤玉土などを加えておきましょう。鉢植えの場合は、水はけをよくするために鉢底に鉢底石を敷いておきましょう。用土は、赤玉土(中粒)・鹿沼土・腐葉土を同じくらい混ぜたものや園芸用の培養土を使います。おすすめは『ハイポネックス培養土鉢・プランター用』です。
植えつけ
椿の植えつけは花後の3月~6月か気温変化の少ない10月~11月がおすすめです。地植えはもちろん、鉢植えでも育てることができます。椿の木は日陰でも栽培することはできますが、日光がまったく当たらないのも良くありません。日差しが当たりすぎず、暗くもなりすぎないところへ植えつけするのが最適です。鉢は、苗よりも一回り大きいものを用意します。鉢が大きすぎると苗が弱ってしまうこともあるため注意が必要です。
植えつけ前は苗ポットを水につけ、根に水分をしみこませます。植えつけの際には、元肥として肥効期間が約1年間持続する『マグァンプK中粒』を土に混ぜ込みます。ポットからそっと引き抜いて植えつけましょう。植えつけが終了したら植物用活力液『リキダス』を1,000倍に水にうすめて、たっぷりとあげましょう。植えつけたばかりの苗は放置していると倒れてしまうことがあるため、支柱を立てておくのがおすすめです。
水やり
地植えの場合、雨の少ない時期や夏場には水やりをします。それ以外は水やりをしなくともかまいません。鉢植えの場合は、土の表面が乾いたら水を与えます。夏の乾燥しやすい時期は土の状態を確認して水やりしても大丈夫です。
肥料
椿の肥料は年2回、花後の3月~5月と冬前の9月~11月に与えます。肥料効果が約3~4ヶ月間持続する『今日から野菜 野菜の肥料』がおすすめです。
剪定
椿の剪定は、3月~5月が適期です。木の内側に向かって伸びている枝や、重なり合っている部分の枝を切り落とします。6月頃になると新しい花芽が出てくるため、花が終わったらできる限りはやめに剪定しましょう。
多種多様な椿の花たち
椿は日本だけでも数多くの品種が誕生しています。その中から、主なものを選んでご紹介します。
ヤブツバキ
ヤブツバキは椿の原種といわれています。たいていの方が椿といわれて最初に思い浮かぶのは、ヤブツバキの姿ではないでしょうか。青森から沖縄にかけて自生しており、赤や白の花を咲かせます。園芸品種の多くは、このヤブツバキをもとにつくられてきました。
リンゴツバキ(ヤクシマツバキ)
暖かい地域を中心に自生している椿です。鹿児島県の屋久島産のものが有名ですが、四国や九州南部、沖縄などにも存在します。名前の通り、リンゴのような実をつけるのが特徴です。花や葉はヤブツバキに似ています。
ユキツバキ
雪の多い東北地方や北陸地方などに多く見られる椿です。積雪に耐えるためか、豪雪地帯では地面をはうような形に育ちます。ヤブツバキと似ていますが、ヤブツバキのおしべの花糸は白色なのに対し、ユキツバキは黄色です。椿の中でも日陰や寒さ、乾燥に強い品種となっています。
おわりに
日本書紀や万葉集など、歴史ある書物に名前が残り、さまざまな場面で人々の生活を豊かにしてきた椿。育ててみると、日本文化の香りも感じられそうです。数多くの品種が存在する椿なら、お気に入りの花がきっとみつかるはず。お好みの品種を選び、丁寧に育てていきましょう。
この記事に関連する商品について
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