2019.06.25 UP
KEIKOさんの鎌倉・谷戸から花便り6
意外と長く楽しめる紫陽花の季節
今年はほぼ平年なみの梅雨入りだった関東。鎌倉の6月はアジサイの色づきが進み、観光の人出が増えてきます。一般にアジサイ開花の盛りは六月中旬頃になりますが、ガクアジサイが少し早く咲き出し、ヒメアジサイ、てまり咲きのアジサイが続きます。
鎌倉の二大紫陽花名所といえば明月院と長谷寺でしょう。「明月院ブルー」といわれる青いヒメアジサイが参道を覆う明月院。青、紫、ピンクのてまり咲きアジサイや白いアナベルなど花色も種類も幅広い長谷寺の「あじさい散策路」は、海の眺望もあって華やかです。それだけにどちらも人気で、入場の行列は覚悟しなければなりません。
明月院 ヒメアジサイ
長谷寺「あじさい散策路」 経蔵背後から登る斜面に咲くアジサイ
ヤマアジサイの品種がたくさん見られる光則寺へ
いつも観光客の賑わいが絶えない長谷にあって、静かに過ごせる日蓮宗の光則寺は「花の寺」としても知られています。晩春に咲く古木のカイドウをはじめ、季節の花々が多く、山門に置かれた境内花マップや草木につけられた名札があることも、花散歩にはうれしいお寺です。
光則寺山門
光則寺 ヤマアジサイの鉢が並ぶ庭
ヤマアジサイ‘深山黒姫’
ヤマアジサイ‘白雪姫’
ヤマアジサイ‘トカラの空’
ヤマアジサイ開花の便りを待ちかねて5月下旬に訪れると、境内にはたくさんの鉢植えが並べられています。それぞれに品種名、系統など情報入りの札が添えられて、ラミネート加工されてはっきりと見やすい名札も多く、写真入りのものならば花色の変化を知ることもできます。訪ねた日にはまだ白かった‘クレナイ’の装飾花が紅く染まった様子を確認できたのもうれしいポイントでした。
ヤマアジサイ‘伊予冠雪’
ヤマアジサイ‘ベニツルギ’
ヤマアジサイ‘竜馬’
赤く色づくまえのヤマアジサイ‘クレナイ’
‘クレナイ’ の名札
‘クレナイ’に限らず装飾花の色の移り変わりや、両性花の開花具合も品種や株によって違いがあるので、日を変えて再訪するのも楽しそうです。そうは思いつつ、行きたいところが多くてなかなか実現できていません。
私はここで長く滞在してしまうことが常ですが、近くには長谷寺はもちろん御霊神社、成就院(参道改修によりアジサイは三陸町に寄贈した為、以前より株数は減少)、稲村ガ崎公園などアジサイの名所も多く、時期によっては鎌倉文学館のバラを眺めるルートも気分が変わって楽しそうです。また、長谷周辺では、お茶の楽しみもよりどりみどりです。
ヤマアジサイ‘モモイロ’
ヤマアジサイ‘紅奴’
ヤマアジサイ‘藍姫’
ヤマアジサイ‘瑠璃美姫’
ヤマアジサイ‘九重濃色’
ヤマアジサイ‘佐久間てまり’
ヤマアジサイ‘池の蝶’
ヤマアジサイ‘土佐紺青’
ヤマアジサイ‘土佐の暁’
浄妙寺では紫陽花のいろいろな表情が楽しめる
鎌倉駅から鶴岡八幡宮を通り過ぎて東の奥にある浄妙寺は臨済宗、鎌倉五山第五位で足利氏の菩提寺です。今年は梅雨入り前に友人とお参りし、変化に富んだ境内散策を楽しみました。石段を上がって山門をくぐると、参道両側の庭は改修中。梅の木が移されていてびっくりです。まずは茶席・喜泉庵の枯山水庭園を拝見。近くの庭植えのヤマアジサイは満開です。谷戸に建ち、起伏のある境内のあちこちにはアジサイ、ガクアジサイの花も色づいていました。
浄妙寺 喜泉庵
花盛りのヤマアジサイ
色づき始めたてまり咲きのアジサイ
江戸時代に描かれた旧境内絵図では、谷戸背後の稲荷山には鎌足稲荷社が、熊野山には寺の鎮守の熊野社が見られます。その由来などにも興味を惹かれますが、今はその山奥まで行く手前の高台に整備されている紫陽花散策路を目指します。そう広くはない散策路をひと巡りすると、向かいの衣張山を眺める展望台があり、ヤマアジサイ、ガクウツギなどいろいろな花が見られます。
浄妙寺「紫陽花散策路」でのヤマアジサイ
境内の石窯ガーデンテラスでひと休みをおすすめ
さて少し散策に疲れてきたころ、境内にある石窯ガーデンテラスへ。大正時代建築の洋館を生かしたカフェ・レストランは、オープンテラス席が気持ちのよい季節。ニコラス・レナハン氏デザイン・作成のガーデンを眺めながらのランチやティータイムはとてもくつろげますし、空席待ちの間や食後に園路を歩いて、近くで植栽を眺めたり撮影したりできる楽しみも一緒に味わえます。この日はヤマアジサイ、ガクアジサイ、カラーリーフを合わせたシェードガーデンが魅力的でした。
石窯ガーデンテラス・この季節はイングリッシュガーデンも華やかで美しい
石窯ガーデンテラス
10:00~17:00(L.O.16:00) 定休日 月曜日
https://www.ishigama.info/index.html
石窯ガーデンテラス・イングリッシュガーデンの植栽にもヤマアジサイが。右はまだつぼみのアナベル
石窯ガーデンテラス・アフタヌーンテイーセット(1人前でもボリュームたっぷり)
木漏れ日とせせらぎのある静かな庭、一条恵観山荘
鎌倉の東奥、浄明寺地区にある一条恵観山荘は、江戸時代初期に後陽成天皇第九皇子一条明良(のちに法名 恵観)によって京都に建てられた山荘を、昭和になってから移築したもので、2年前から一般公開されています。
一条恵観山荘入口
京都から移築された山荘と庭園
800坪の敷地は京都から枯山水や庭石を移し、滑川沿いの土地に合わせて整えられていますが、赤松、紅葉、苔による京都風庭園です。また、四阿の周囲には小川、流れ蹲踞も配されて、熊笹の中にひっそりと咲くヤマアジサイの彩りが野趣と雅びを感じさせてくれます。
せせらぎのほとりに咲くヤマアジサイ‘倉木てまり’
庭園内のヤマアジサイは約50種を数えるとのことで、竹林や川沿い、熊笹の間などに地植えされています。草陰に名札が添えられている株が多く、品種名を知ることができるのはうれしいですね。
庭園内に建つ四阿
滑川沿いに咲く‘天竜碧’
滑川の沢音が聞こえる「紅葉の小径」
庭の中にはヤマアジサイの植栽が目立つ。約50種あるとか。
‘クレナイ’
‘海峡’
‘土佐のまほろば’
‘普賢の華’
一条恵観山荘は庭園公開のほかに「山荘建物見学」を開催しており、別料金のガイドツアー方式で建物内部を見ることができます。所要時間50分程度。要予約。開催日はHPのカレンダー参照。また「かまくら月釜」、「和菓子づくり体験」といった公開催事もあり、こちらも日程、詳細はHP参照。この催事の日は庭園散策がお休みとなるので、要注意です。
一条恵観山荘
10:00~16:00(最終入園15:30) 定休日 月・火曜日と催事開催日
https://ekan-sanso.jp/
一条恵観山荘で一服したい、かふぇ楊梅亭
かふぇ楊梅亭(やまももてい)は一条恵観がヤマモモの実を愛し、天皇へ献上したこともあるというエピソードにちなんだ店名。大きなガラス窓から庭や滑川の流れを眺めてお茶とお菓子をいただけます。抹茶と季節の上生菓子のほか、パティスリー雪乃下監修のロールケーキや珈琲も選べます。今回は青紅葉が美しい季節でしたが、晩秋の紅葉の頃も楽しみですね。
楊梅亭 外観
抹茶と季節の上生菓子「あじさい」
かふぇ楊梅亭内からの庭園と滑川の風景
かふぇ 楊梅亭
10:00~16:00(L.O.15:30) 定休日 月・火曜日と催事開催日
https://ekan-sanso.jp/event/#cafe
鎌倉でのアジサイ散策、名所から知られざる見所まで、いくら時間があっても足りないくらいです。梅雨のひととき、ぜひ訪れてみませんか。ただ、まだ間に合う散策とはいいながら、お寺によっては来年のために、そろそろ切り戻しをはじめるところもありますのでご承知おきを。
KEIKOさんの鎌倉・谷戸から花便り1
KEIKOさんの鎌倉・谷戸から花便り2
KEIKOさんの鎌倉・谷戸から花便り3
KEIKOさんの鎌倉・谷戸から花便り4
KEIKOさんの鎌倉・谷戸から花便り5
KEIKOさん
北鎌倉に越す以前、東京時代の仕事は雑誌編集者。マンションのベランダと戸建ての庭でのガーデニング経験あり。昔はタネから育てたり、品種コレクションを頑張ったこともあるけれど、いまは気楽に自然体の庭づくりを楽しんでいる。鎌倉や旅先では寺社の庭や公園・緑地の季節の花を見たり撮影したりする散歩好き。
人気コンテンツ
POPULAR CONTENT