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The Small Garden Which Moves
知っていますか!動く小さな庭
楽しいトラックガーデン!
柵山直之(メイガーデンズ)

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植物離れ、虫嫌い、多忙な現代人

近年、実は、われわれ造園業者は、ちょっと大袈裟ですが、木を植えることと同じくらい、木を伐採する仕事が多いのです。落ち葉が迷惑というクレームへの対応であったり、  世代交代で家屋をリフォームする際に、親の世代が維持してきた庭木の撤去であったり、そんな機会が非常に多いのです。手間がかかるからとか、虫がつくからという理由で、新築をしても家の周りや庭に木を植えないという方も非常にふえてきています。

そんなこともあって、時間に追われる現代人は、植物と触れ合う時間がなかなか持てない、ちょっとさびしい世の中だと思っています。しかし、庭のある暮らしで世の中を豊かにしたいと前々から言っている私は、そんな状況をなんとかしなければという思いが、年々強くなってきていました。

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街中を行くトラックガーデン

 

造園屋として主体的に社会と関わりたい

造園業者は、工事費用が大きい面もあり、基本クライアントワークが中心です。依頼があって、はじめて庭や公園等をつくります。しかも、造園屋の多くが店舗といった窓口もなく、不特定多数の一般の方々との接点があまりないのです。そのせいかはわかりませんが、自身が努力しなければ、世の中からどんどんかけ離れていきますし、人とのつながりもなくなっていってしまいます。クライアントのためだけに仕事をする、特定の人のための専門的な仕事になってしまっている気がしてなりませんでした。じゃあ、どうするか。庭のある暮らしの魅力を伝えるために、もっと能動的に、自分から社会に働きがけをしなければ、どうにもならない、という思いはありました。

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トラックガーデン誕生、それは、幸せから生まれた発想

緑色のボンゴは、弊社スタッフが日々仕事で愛用しているトラックでした。2013年にその彼の結婚式の余興の一つとして、そのトラックの荷台を、ウェルカムガーデンとして庭にしてみたのです。

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元々、植木を山積みにしてビル街を走行する造園屋のトラック、運ぶ方の気持ちとして愉快だなとは思っていましたが、それをさらにエスカレートさせて、荷台を大きな箱庭に見立てて、小さな庭を造ってみたのです。実際につくってみると、これが意外に見栄えもよく、そのまま実際に動かしてみたくなりました。きっと移動している最中でも、庭の楽しさを不特定多数の人に見てもらえる。手軽に、庭のある暮らしの啓蒙になるではないかと思ったのです。そこで、「これは解体する前に、名古屋の街に繰り出してお披露目をしよう!」ということになったのです。もちろん、そこまでは考えていませんでしたが、近隣を走る可能性はあったので、荷重制限や積載物の固定など、法律違反のないようにつくっておいたのが幸いしました。

 

これって乗っていいんですか!?

依頼者からの工事支払いでよくも悪くも完結できてしまう庭づくりという仕事をしながら、そもそも自分は、植物を通じて人を感動させることができているのか、という自問自答はいつもしていました。ミュージシャンが路上で演奏し、どれだけ自分の曲に足を止めてもらえるのか、と同じように、ストリート的に庭のパフォーマンス、もしくはゲリラガーデンに挑戦したいという思いがあった中でのトラックガーデンの実行でしたが、やるとなると実際は不安でいっぱいでした。

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人通りの多い街中で、庭のパフォーマンスは勇気がいります。昨年、このサイトでご紹介していただいた、「落ち葉アート」に比しても、より大きな勇気が必要でした。人々がせわしく働く平日の昼に、駐車可能な道端にトラックを停めて、荷台の小さな庭で、私自身が昼寝をするというパフォーマンスは、不特定多数の人にとってはいったいどう映るのだろうと思う反面、どうにでもなれと思えば、ある意味気持ちのよいものでした。

案の定、多くの人が見向きもせずに通り過ぎる中、女性3人連れが「これって乗っていいんですか?」と声をかけてきてくれました。「もちろん、いいですよ」と、実際に乗ってもらうと、それを契機として、カップルやおじさんなど何人もが次々と声をかけてきてくれて、実際に乗ってももらいました。人が人を呼ぶ感じでした。

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庭や植物が、こうして人を惹きつけて、喜んでもらえる力がある、直接、そう確認出来たことは、いまだに自分の支えとなっています。自然から遠ざかる世の中に一石を投じるという効果や期待というものが、小さいながらもあって、それが、その後も機会あるごとに、トラックガーデンの活動を続けていける、その源になっているのだと思います。

トラックガーデンが集合する 森のピクニックガーデン

その後、トラックを走らせて庭を見せるという活動を一人で続けていたら、それを知った同業者が、一緒にやろうと声をかけてくれました。その頃、名古屋で緑化啓蒙活動をする団体「ひらひら日本」が、トラックガーデンのことを取り上げてもくれました。そんな進展があって、2015年の秋に、名古屋で地元企業として有名なノリタケの本社隣・工場跡地の“ノリタケの森”で、トラックガーデンを3台停めて展示したイベントを実施、この取り組みがはじまりで、2019年で4回を数えるGW恒例の「森のピクニックガーデン」という大きなガーデンイベントに進化しました。この会場で植物を楽しむメインガーデンは、1年に1回集合するトラックガーデンの数々です。

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ノリタケの森で開催された「森のピクニックガーデン」に集合したトラックガーデン(一部)

 

造園家やガーデンデザイナーにとって、ガーデンショーに参加し、モデルガーデンを毎年つくるのは、本音でいえば費用的に厳しいものです。それに比べて、トラックの荷台程度であれば、在庫などを利用しながら、いつでもつくることが出来ます。それに、個人の造園屋がいろんな意味で頑張れる範囲かと思います。ここ4年で11社の造園系の会社が、トラックガーデンとして参加してくれました。もしかして、一番のメリットは、参加者、主催者、会場にとって搬入・搬出がともに簡単なことかもしれません(笑)。

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森のピクニックガーデンで木と触れ合う子どもたち

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いろいろなアーティストが花と緑に絡めて得意なパフォーマンスで楽しませてくれる

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名古屋の市街地にあるノリタケの森。元は工場跡地。

 

トラックの荷台に乗るとワクワクする

イベントで楽しめるように、トラックガーデンは、停車中は人が乗れるようにしてあります。見るだけではなく、乗れるようにすると大人も子どももフォトスポットとして喜んでくれます。実際、乗って感じるのですが、トラックの荷台に乗るだけでも楽しいのです。しかも、周りはきれいなお花畑で、このまま走り出して風を受けたらどんなにステキだろうと思わせる、ワクワクした気持ちになります。実際は、人を乗せて走ることはできませんが。

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多くの人が、自分が作った荷台の小さな庭に立ち入り、笑顔になっている。それだけで、庭を作った張本人として、とても幸せな気持ちになります。イベントではそんなフォトスポットとしての役割もあり、それぞれの出展者が植栽コーディネートにこだわり、トラックガーデンを使って、庭の魅力を伝えてくれています。「ワイルドな野草の庭」「ホワイトガーデン」「木陰の芝庭」「カフェカウンター付きの庭」「畳を取り入れた和の庭」「海辺の庭」。これすべてこれまでノリタケの森に来てくれたトラックガーデンの庭のテーマです。すごくないですか。そして、このさまざまな庭を通じて、出展者もたくさんの人たちと一日中交流できるのがすてきなことです。

 

作庭技術は屋上庭園のノウハウ

では、トラックガーデンづくりのノウハウの一端をお話しましょう。先にも話したように、近隣といえども公道を走りますから、まずは積載オーバーにならないように、荷重制限を調べてその範囲内で作庭します。また、安全上、風や振動で構造物や植物が外へ飛び出さないようにしっかりとした固定も必要です。さらに、イベント用の短期間だとしても、そこで植物が生きていくことになりますから排水層も設けてなくてはなりません。まさに、小さな屋上庭園をつくるようなものです。

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トラックガーデンの製作図面

「基本そのまま移動して、駐停車した場所を一瞬にしてガーデン空間にする」これがトラックガーデンのコンセプトです。そして、本当はずーっと何年も荷台の庭をそのままで育てていきたい、それこそが本来のトラックガーデンだと思っていますが、正直、それ専用のトラックを維持できる力がない今、トラックは日常業務でも使用しますので、その都度つくっては解体し、つくっては解体しているのが現状です。しかし、解体するからといっても、少なくともトラックガーデンとして継続的な緑化が可能だということを知ってもらいたい、伝えたいため、あくまで土を入れそこに植物を植え込んでいます。根が弱い植物の場合はポットのまま入れ込むこともありますが。基本は植え込みです。この辺のこだわりは理解してもらえれば幸いです。

 

花や緑でいっぱいの未来へ向かって発車

お花や木々でいっぱいの街並みや風景。それは、絵本やイラストの中だけの世界でしょうか? お花いっぱいの小さな庭に変身したトラックが、日常の街中を駆け抜ける。現に、

名古屋とその周辺では、トラックガーデンが、実際には年にわずかですが、街中を走っています(笑)。「トラックだって庭になるんだ、そしてどこにでも移動できるんだね」。そんな、今までにない光景が一つの常識として子どもたちの目に、頭の中にインプットされればいいなと思いながらやっています。

 

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私がやりたいことは、庭のある暮らし、楽しいガーデニングがムーブメントとして一般の間でさらに広がる手助けです。その実現に向けて、トラックガーデンの活動は広い砂漠に水一滴を落としているくらいのことかもしれませんが、それでもいいと思います。だれもがやらないことをはじめて、いつしかだれもがやることになってくれれば、そのために、自分を信じて実際の活動を積み重ねていくこと、それが大切だと感じています。

 

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軽トラガーデン(森のピクニックガーデン会場)

 

トラックガーデン、まだまだ夢は広がります。表現しやすいのは1tトラックだと思いますが、オシャレな外車や色のかわいい軽トラにも庭をつくってみたいですね(笑)。実は、見るのも楽しいのですが、実際にはその作業そのものが最も楽しいんじゃあないかと、自分では思っています。そう、軽トラガーデンの活動は、どこかでやっていると聞いたことがあります。そんな方々といつかいっしょに活動できる日が来るのを楽しみにしています

 あなたもトラックガーデンに挑戦してみませんか! そして、来年のGWは名古屋ノリタケの森へ街を走って集合です!

 

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柵山直之(さくやま・なおゆき) (有)メイガーデンズ代表 、ガーデンデザイナー、1級造園施工管理技士。昭和46年生、長野県松本市出身。大学卒業後、大手生花店の事業部で6年半勤務後、2000年に名古屋市で独立。現在、三重の御在所岳の麓でガーデンを作り、そこで暮らしながら、主に東海地区で庭作りの業務を行う。造園業務の傍ら、植物のある暮らしを広げるための活動としてさまざまな取り組みも展開している。名古屋市「星が丘テラス」にて、オーガニックガーデニングの年間講座を兼ねたコミュニティーガーデン「星のガーデナーPROJECT」を企画運営。菰野町教育委員会主催の一般向けガーデニング年間講座講師。定期ガーデンイベント「森のピクニックガーデン」(ノリタケの森)、「星が丘ポタジェ」(星が丘テラス)を主催。ノックノックス(東京)という劇団の一員でもあり、生の植物による舞台美術を担当。

メイガーデンズ

https://www.maygardens.jp/

トラックガーデンHP
https://truckgarden.jimdo.com/

森のピクニックガーデン2019HP
https://maygardens9.wixsite.com/picnicgarden

星のガーデナーPROJECT
https://maygardens9.wixsite.com/hoshinogardener#

ノックノックス
https://knock-knocks.jp/

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