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イギリス便り2019夏 “自然回帰”の動き

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上の写真は、ハンプトンコート・パレスフラワーショーで、今回私が参加したガーデンです。テーマは「ストップ アンド ポウズ」、ライフカテゴリー部門でゴールド受賞、そして施工カテゴリーにおけるベストインショーも受賞しました。ハンプトンコートの様子をお伝えしていきたいと思います。

色彩豊かに植栽を使いこなすイングリッシュガーデンのスタイルは、18世紀に広まる産業革命に大きく影響していることは以前にご紹介いたしました。当時のイギリスでは大量生産が可能になり、生活、社会、経済、政治が変わっていきます。イギリスより始まる産業革命という時代背景を強く受け、その頃より“自然回帰”の思想が生まれたことは、今日においてもイングリッシュガーデンに深く影響を及ぼしています。

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“自然回帰”をテーマにしたキャサリン妃の庭

 

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チェルシーフラワーショーで使用した丸太はハンプトンコート・パレスフラワーショーでも再利用

今年はチェルシーフラワーショー に続き、キャサリン妃による“自然回帰”をテーマにしたデザインの庭はハンプトンコート・フラワーショーでも披露され、どちらも長蛇の列ができる程の人気となり大きな話題になりました。ハンプトンコート・パレスフラワーショーでは、専門のガーデンデザイナー2名がキャサリン妃をサポートし、会場の広さや雰囲気を活かした、子どもたちや家族がより自然と触れ合うことができるようにデザインされた庭が出来上がりました。それはイギリスの田園風景とも言える「フラワーメドウ」を再現したものでした。

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フラワーメドウ、ロンドン市内のセントジャームスパークス内

 

イギリスにおいてフラワーメドウは古くから農業を支える役割を担ってきました。多くの生態系を守り、育ててきたフラワーメドウには150種以上の生態系が存在しているという調査が行われており、そのお陰でたくさんの作物が受粉を行い、私たちに食物として供給されています。また、夏の終わりに刈り込まれるフワワーメドウの干し草は、家畜たちの大切な食料源となります。家畜は私たちの生活においてなくてはならない存在です。

イギリスでは調査によると1930年から97%のフララーメドウが土地開発などにより失われてしまったと言われています。戦後に生活の便利性を求め続け失ったものはたくさんありました。地球温暖化対策の問題を抱える今、改めて“自然回帰”への動きが見直されています。そして、ロイヤルファミリーの積極的な活動はメディアを通して大きな役割を果たしてくれました。

 

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インスタに上った友人宅のフラワーメドウ

 

イギリスでは 7月4日がナショナル・フラワーメドウの日として制定されています。2年前、私の仕事仲間の庭につくられた夕日に映えるフラワーメドウの写真を私が撮ってデータを差し上げていたところ、ご本人の“自然回帰”についてのメッセージと共に、この7月4日にインスタグラムで写真を紹介してくれました。たくさんの共感のメッサージと共に、なぜ自然が大切なのかを考える機会となり大変に意義深い日となりました。自然を守ることは大切なことです。地球が生まれた時から私たちは共存をしてきているのです。

 

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庭の中でくつろげるように用意したクッションとブランケット。並べ方も話し合って決めた

 

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庭に高さを出す事でくつろげる場所からの目線が変わり自分だけの空間感の演出ができます

 

さて、冒頭の話に戻ります。今年のハンプトンコート パレスフラワーショーでは、共に仕事を重ねてきた友人のデイブ グリーンの庭づくりを手伝いました。タイトルは「Stop and Pause」。見事にゴールド受賞と、施工カテゴリーにおけるベストインショーを頂くことができました。

 デイブはハンプトンコートフラワーショーのショーマネージャーを数年勤めたのち、つくり手になりたくてランドスケープのマスターを勉強し現在に至ります。今まで共につくってきた庭は、教育にちなんだメッセージを伝える依頼のもとにつくることが多かったのですが、今回は、友人本人がすべてのコンセプトを企画し、デザイン共に植栽も本人のテイストで計画されました。

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プレスデーではチェロリストに庭の中で演奏をしてもらった

 

庭の中へ入る入り口は、陽のあたる場所として、イングリッシュコテージガーデンの植栽地として予定していました。施工工程が植栽へ突入したその日は、仕入れた1000鉢ほどの中で組み合わせが何度も何度も繰り返されました。今までの経験から、この最初の植栽の組み合わせには時間がかかるもので、時には丸2日頭を悩ませることもあります。植栽プランは机上で叩き注文を出すのですが、実際の植物の状態は当日にならないとわからないからです。余裕を持った鉢の数を手配していたこともあり、通常より組み合わせの決定には焦ることもなく進んでいきましたが、最後の全体感をまとめるあたりになると、手持ちの鉢に限りが出初め一番頭を悩ませます。この辺りはいつも私にお任せの友人は、黙々と植えつけに精を出していきました。いい庭をつくるにはいいチームワークである事はとても大切です。

 

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入口のフラワーメドウを模した、イングリッシュコテージガーデンの植栽カラースキームは白、紫、黄色

 

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森林の中の植栽をイメージして作られている。カラースキームはイングリッシュコテージガーデン

 

植栽が入る頃になると現場の雰囲気がガラッと変わり始めます。庭に色が入り始めると作業中でも人の目にとまり会話が生まれます。施工の時から私たちの庭に好感を持ってくださった方々からいろいろなエールを頂きました。一番皆さんの目を引いたのは、入り口につくられたフラワーメドウを想像させるイングリッシュコテージガーデンスタイルの植栽だったのはいうまでもありません。

 

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RHS主催のエコブースとして、プラスティック製品の使用について深く関心を持っていることをメッセージとして伝えている

 

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ハンプトンコート・パレスフラワーショー会場の中の様子。池を挟んで両となりとも会場になっている。芝生の上ではピクニックも可能

 

私は日本における私の役割のひとつに、どの様に自然の大切さを皆さまと共有できる機会がつくれるか考えています。これからもさまざまな機会を通し、特にイギリスで学んだことなどを主にご紹介していきたいと思います。

 

 

 

 

佐藤さん

 佐藤麻貴子 Profile
ガーデンデザイナー、ガーデナー
東京の老舗ホテルを退社後、英国で園芸学・ガーデンデザインを学ぶ。英国 チェルシーフラワーショーや長崎ハウステンボス ガーデニングワールドカップでは数々の金賞を受賞しているガーデンデザイナーのコーディネーターを務める。
2011年 makiko design studio を設立。ハンプトンコートフラワーショー2012 に「日本の復興―希望の庭」を初出展。準金賞を受賞。イギリス独特の植栽と、日本庭園を組み込んだ独自のスタイルが文化を越えて好評を博す。
チェルシーフラワーショー100 周年(2013年)では、RHS(英国王立園芸協会) のショー運営本部にて本部長のアシスタントを務め、また、イギリスにあるグレートディクスターでは、現在もガーデナーとして研鑽を重ねるなど、国内外で活動中。

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