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グラス類や宿根草を上手に使いたい 服部ファームガーデンに学ぶ

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2021年はわが家の庭をどんな風にしようかな、と思いを巡らせている方もおられるでしょう。特にグラス類や宿根草をもっと上手に使いたい、そう思っている人もいるでしょう。そこで、グラス類と宿根草の上手な使い方などを、神奈川県愛川町にある服部ファームガーデンの2019年6月上旬と2020年7月上旬の様子から、庭づくりのヒントになる点を見ていきましょう。

ここは、宿根草とグラス類で構成されているので、たくさんの花が一斉に咲いてきれいだ、というのではありません。さまざまな花が順次咲いて、そして花が終わったらその姿も絵になる、咲き続ける種類でも、周りの植物の変化で、見える景色が変わる、そういうガーデンなのです。絶対的な見頃を決めつけられない、その季節ごとに見頃がある、冬枯れだって景色になる、とても魅力あふれるガーデンです。

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2019年6月上旬

 

そんなガーデンでひときわ多用されているのが、グラス類です。特にグラス類は、風がある日なら風に揺らぐグラスの景色が本当に素敵です。ガーデナーの平栗智子さんも、「グラスと宿根草を組み合わせると、花だけのガーデンと違い、かえって花の個性を引き立たせることが出来ますし、花後の姿もより風情が出て、庭の風景になります」といいます。

 

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2020年7月上旬

 

そして、ここでは区画ごとに開花時期をそろえたり種類をまとめるような植栽はしていません。また、色もホワイトガーデンなどのように単色で演出するような手法もとっていません。誰が見ても、植物自身で勝手に生えてきたと思えるような、ナチュラルな植栽になっています。

 

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サイロや背景の山並みが素敵なガーデン

 

よく聞くナチュラルガーデンの一つですが、もちろん放ったらかしにしている訳ではなく、緻密にデザインしながらも、植物自身の生育状況を見ながら株を取捨選択してガーデンの構成をつくっている、服部牧場・専属ガーデナーの平栗智子さんの取り組みの賜物です。

 

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ガーデンをデザインし管理する平栗さん

 

今回、平栗さんが上手に取り入れているグラス類とおススメの宿根草を紹介したいと思います。

 

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カレックス・フラゲリフェラ

Carex flagellifera カヤツリグサ科 

株張りが1m前後の大型になるカレックス。茶色の葉が、案外いろんな花色・葉色と合わせやすいです。常緑ですが、牧場では晩冬にバッサリと切り戻して、新しい葉を出させて更新しています。

 

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カレックス・エヴァリロ

Carex oshimensis ‘Everillo’ カヤツリグサ科

美しい黄金色のカレックス、こちらも大型になります。葉の色が美しいので、花がない時期でも存在感があります。葉が痛んできたら、切り戻して葉を更新させます。

 

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スティパ・テヌイッシマ

Stipa tenuissima イネ科

穂が上がる初夏が特に美しいグラスです。風に揺れるタイプの宿根草との相性抜群ですが、土壌が過湿気味の牧場では若干短命です。穂が咲き進んだら、間引いたり切り戻して蒸れを防ぎ、新しい葉を出させます。

 

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ペニセタム・マクロウルム

Pennisetum macrourum イネ科

縦にも横にも大きくなるので広いガーデン向きですが、7月頃に穂を出すのでその頃に咲く背の高くなる宿根草や、ダリアに合わせています。晩冬に切り戻しますが、他のグラスより芽出しが早いので、いつも切るタイミングが難しいです。

 

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ミスカンサス・パープルフォール

Miscanthus sinensis ‘Purple Fall’ イネ科

ミスカンサスの中では早くに穂を出すタイプで、ガーデンでは8月に穂が上がります。秋深くなると、葉がグリーンからパープルに変わる美しい品種です。晩冬に切り戻します。

 

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ホルディウム・ジュバタム

Hordeum jubatum イネ科 別名 ホルデューム・ユバツム、リスのしっぽ、他

やさしい穂を上げる美しいグラスです。アリウム・ギガンチウムが咲く5月下旬頃から穂が上がるので、一緒に植えています。穂が咲き進むと、また違った表情を楽しめます。切り戻すと再び穂を上げます。

 

次に宿根草をご紹介します。けっして派手な種類はありませんが、花や草姿が特徴的で、色というより姿形で楽しむ種類を取り上げてみました。

 

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クナウティア・ウォーターカラーズ

Knautia macedonica ‘Watercolours’ スイカズラ科

咲き進むとピンクの濃淡が楽しめる品種です。ガーデンでは草丈1m前後になり、風に揺れる花はナチュラルガーデンにピッタリで、グラスにもよく合います。若干短命ですが、こぼれダネで残っていきます。クナウティアの品種違いで、マケドニカ(赤)やアーベンシス(青)も植えています。

 

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トリフォリウム・ルーベンス

Trifolium rubens マメ科

シロツメクサを細長くしたような形でピンクの花を初夏に咲かせます。冬に地上部が無くなっても春に再び芽吹きます。過湿気味のガーデンでは一番花以降はきれいに咲かせられないので、下までバッサリ切り戻しています。草丈が60㎝くらいなので、スティパなどと相性がいいです。

 

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アリウム・ギガンチウム(写真・紫色の花)

Allium giganteum ユリ科 別名 アリューム・ギガンティウム

ガーデンでは5月下旬から咲き始めるアリウム・ギガンチウムが、ガーデンシーズンの幕開け的な存在です。1mぐらいの高さで紫色の小花の集合体が球状に咲きます。アリウム類は花後キレイに球状が残る品種とそうでないものがありますが、ギガンチウムは残らないタイプなので、花後は球根ごと掘り上げています。

 

ジギタリス・ルテア(写真・白い長い穂の花)

Digitalis lutea ゴマノハグサ科

ジギタリス・ルテアは原種で花が小さく、色も淡い黄色なので何にでも合わせやすい種類です。一般に出回っているジギタリスは2年草扱いですが、この品種は毎年よく咲き、こぼれダネでも増えています。

 

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バーベナ・ハスタータ‘ピンクスパイヤー’

Verbena hastata ‘Pink Spires’ クマツヅラ科

初夏から咲き出し、花後切り戻すと繰り返し咲きます。

こぼれダネもよく出ます。茎がしっかりしているので、1m前後の草丈が欲しいところに植えられる便利な花です。他にブルーとホワイトの品種があります。

 

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アスチルベ・ピーチブロッサム

Astilbe × rosea ‘Peach Blossom’ ユキノシタ科

ガーデンに植えているアスチルベの中で、一番最初に初夏に咲く品種です。淡いピンク色の花後も花穂をそのままにして、シルエットを楽しんでいます。年々夏が厳しくなって葉が痛むようになってきたので、場所の移動を検討中です。冬枯れを楽しんだ後、晩冬にすべて切り戻します。

 

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シレネ・ガリカ

Silene gallica var. quinquevulnera ナデシコ科

初夏に小花が無数に咲き、ふんわりとした雰囲気を出します。ガーデンでは一年草扱いですが、こぼれダネでよくふえます。

 

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エリンジウム

Eryngium セリ科

苗の購入時の名前が、どう見ても違ったので品種名は不明のままですが、初夏にとてもよく咲くプラナム系の品種です。草丈1mくらいになり、過湿気味の牧場では支柱が必要になります。枯れ姿も楽しんでいるのでこぼれダネもよく出ます。夏に見苦しくなったら、地上部の新芽を確認して切り戻します。

 

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ヘレニウム・ロイスダー ウィック‘

Helenium ‘Loysder Wieck’ キク科 別名 ダンゴギク

ガーデンではヘレニウムのいろいろな品種を植えていますが、この品種は丈夫でよく咲きます。草丈が1mくらいになり花の重みで支柱が必要になりますが、サイズ調整をせずに自然のまま咲かせています。

 

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ペンステモン・ヒルスツス

Penstemon  hirsutus ゴマノハグサ科 別名 ペンステモン・ハシュータス

ガーデンではペンステモンの品種をいろいろ試していますが、この品種が一番しっかり咲いてくれます。ハスカーレッドよりもコンパクトで、花茎が無数に上がります。ラベンダーブルーの花は初夏に咲きます。花茎が多すぎて蒸れやすくなるので、この品種は花後、花茎を切り戻します。この品種をよりコンパクトにしたペンステモン・ピグメウスも可愛らしくオススメです。

 

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ベロニカストラム・シビリカム

Veronicastrum sibiricum 別名 クガイソウ

ガーデンではベロニカストラムのいろいろな品種を試しています。花期は短いのですが、花後の花穂が黒いシルエットに変わってからが、ベロニカストラムは本領を発揮します。生長がゆっくりなので、気長に育てて花茎がたくさん上がる大株になるのを待っています。草丈も1m以上で年々大きくなっていきますが、株張りはコンパクトなので、おススメです。いま私が一番気に入っている植物です。

 

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ゲラニウム‘ジョンソンズブルー’

Geranium ‘Jonson’s Blue’ フウロソウ科

初夏に無数の美しいブルーの花を咲かせます。咲き進むと草丈60㎝以上になって倒れやすくなるので時々切り戻します。牧場ではいろいろなゲラニウムを植えていますが、秋の紅葉はジョンソンズブルーが一番美しいと感じています。

 

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広葉マウンテンミント

Pycnanthemum muticum シソ科 別名 ピクナンテヌム、ピクナンセマム

シルバーグレーの葉が美しく、夏に小さな造形的な花を咲かせ、香りもさわやかでドライフラワーにも適しています。しかし牧場では地下茎で隣の大事な植物の下に入り込んで困りものなので、現在は隅に移動しました。単植で伸び伸びと育てるのに適した植物です。

 

 

いかがでしたか。こういったグラス類や宿根草を取り入れると、四季折々いかようにも楽しめるガーデンが出来上ります。ぜひ、ご自身の庭づくりの参考にしていただければ幸いです。また、服部ファームガーデンは、初夏から見ごろが始まります。2021年は、シーズンを通して楽しんでみてはいかがでしょう。

 

 

 

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服部ファームガーデン

服部牧場オフィシャルサイト

※天候によっては、ガーデンのみ休園の可能性があります。

 

取材協力 平栗智子(専属ガーデナー)

取材・撮影 出澤清明
園芸雑誌の元編集長。植物自由人、園芸普及家。長年関わってきた園芸や花の業界、植物の世界を、より多くの人に知って楽しんでもらいたいと思い、さまざまなイベントや花のあるところを訪れて、WEBサイトやSNSで発信している。

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