2021.07.08 UP
群馬にすてきなローズガーデン誕生! 中之条ガーデンズ
群馬県にバラの美しいガーデンがこの春オープンしました。「中之条ガーデンズ」です。ローズガーデンはいくつかのコーナーに分かれていて、順に進めば、その都度さまざまなバラの世界に浸れる、すばらしい構成となっています。
この中之条ガーデンズ、2013年、それまでJAあがつまが運営していた「薬草テーマパーク 薬王園」を中之条町へ譲渡、その後プロデューサーに塚本こなみさんを迎え、総合プランニング・ガーデンデザインの吉谷博光さんや園芸家の吉谷桂子さんも参加、ローズガーデンは横浜イングリッシュガーデンのスーパーバイザーとして活躍している、河合伸志さんが植栽で加わりました。
植栽されているバラは約400種、そしてクレマチスや宿根草、カラーリーフ、さらに樹木など、バラと相性のいい植物をふんだんに加えて色彩や立体感を演出、これまでにないローズガーデンに仕上げています。花の最盛期は6月半ば、関東の平野部より半月以上遅めになっているので、平野部のバラを楽しんだ後に、再び花を楽しめるという時期的なメリットもあります。
さっそく、ローズガーデンを歩いてみましょう。入り口からの園路は、アーチに誘引されたバラやスタンダード仕立てのバラ、そして植栽されたバラの組み合わせで演出されています。そこを過ぎると最初の花園に入ります。外からは見えないよう構成され、入った途端に華やかな花や葉の彩りに圧倒されます。6月ですから、ユリも咲き、さまざまな宿根草がいろどりを添えていました。むしろここではバラは主役ではなく、他の草花たちと同じ出演者としてあるように見えました。バラ以外の魅力に引き込まれます。
次の花園は、無機質な壁面に沿って植えられた葉色や葉の形が美しい植物たちを見ながら、広大なスパイラルガーデンを窓から覗く演出のあるコーナーになります。ここを囲む木製の垣根には、バラとクレマチスがまるで絵を見るように咲いていました。モダンと日常にある景色を上手く組み合わせた空間でした。
そして、次のコーナーはこのローズガーデンで一番の圧巻な景色が待っていました。前へと進む園路の両側は、バラの壁。私などおじさんがここを歩いてもよいのだろうかと、思わせるくらい、華やかでかわいらしい演出です。でも、バラの壁の間を進むだけで、気持ちが華やぐのは老若男女、みな同じです。両側は、行き止まりのボーダー風ガーデンで、バラの壁との間にいると、幸せな気持ちになってきました。
バラの壁を抜けるとそこには円形サークルで立体的な支柱があって、そのすべてにバラが咲き、360度バラに囲まれるコーナーになります。ピンクを中心としたパステル系の花色で囲まれているので、圧迫感もなく、おとぎの世界にいるような気にもなります。特にここは、バラの壁のコーナーと併せて女性には大人気のようで、私がいる間も、行ったり来たり、人が絶えませんでした。
次へ進むといきなり華やかな色彩の世界になります。黄色やオレンジ色を主にした花と青色の構造物のカラーリングを合わせた演出は、かなり強い印象ですが、その前の色彩とのギャップで、驚きと感動を与えてくれますし、見るものを飽きさせない景色の転換でした。
さらに進んで、いきなり白の世界へ。バラも草花も緑の葉以外はすべてホワイト、まさに白の世界です。白一色には、さまざまな印象がありますが、私には心が洗われる、浄化の空間に思えました。なにも考えずにそこに佇むことで、自身が浄化される、なんてことはないのですが、そう思わせてくれる演出でした。
まだまだ続くコーナーは、紫のコーナーです。紫を基調にしてはいますが、花は紫ばかりではなく、明るい色も入っています。またフランスの庭園にありそうな整形花壇のつくりが、やはりそれまでのエリアとの印象が異なり、目を引きました。
最後に出口へ向かうところは赤いバラを基調に、園内が見渡せる休憩コーナーとなっていました。ローズガーデンはここまでです。ここから見える、スパイラルガーデンやナチュラルガーデン、そして遠くの山の景色など、中之条ガーデンズが立地に恵まれているのがよく分かります。
ガーデンズの他のコーナーにも触れておきます。まずは町民花壇です。町民の方が各コーナーを自分の好みで、しかし、人に見せることを前提として花壇をつくります。手入れを自身が行うのですから、こんな楽しい花壇はありません。
そして、ガーデンズの中心に位置するスパイラスガーデン。この季節は黄金に輝く麦の穂で彩られていました。麦畑を見るなんて思いもしませんでしたが、なんかホッとしたのは確かです。また、グラス類が風に揺れる光景もなかなかでした。
さらに歩くと、ふる里の野山があって、その向こうにナチュラルガーデンがありました。ふる里の野山は地元にある植物を見せる、というコンセプトですから、中之条らしさのあるコーナーなのかもしれません。それに続くナチュラルガーデン、季節の宿根草を主体に自然環境の調和をテーマにしたコーナーです。派手な風景ではありませんが、見ていて落ち着くそんなガーデンになっていました。
その先には、中之条ファームがあり、リンゴ畑や食香バラの畑があります。特に食香バラは、中国山東省から導入されたメイクイというバラで、豊華(ホウカ)や紫枝(ズズ)という品種を植えています。中国ではジャムや香水などの加工品に利用されていますが、ここでも今年の収穫も終わり、どんな加工品ができるか楽しみです。
薬王園時代からある花みどり館の中国風建物も、広大な敷地の中ではあまり目立たずに、いい具合で残っているように思います。とにかく、春と秋はローズガーデンが主役です。たくさんのバラを視覚的に見せる演出は、他に類をみないようにも思います。ガーデンはできてお終いではありません、年々よくなっていく、変わっていくのもガーデンの楽しみです。中之条ガーデンズがこれから、どのように進化していくのか、期待していきたいと思います。
中之条ガーデンズ
https://www.town.nakanojo.gunma.jp/garden/n-gardens/
取材・写真 出澤清明
園芸雑誌の元編集長。植物自由人、園芸普及家。長年関わってきた園芸や花の業界、植物の世界を、より多くの人に知って楽しんでもらいたいと思い、さまざまなイベントや花のあるところを訪れて、WEBサイトやSNSで発信している。
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